|
私の生まれ故郷、と言っても、現在に至るまで離れたことのない、この町である。たくさんの思い出を生み出し、私を育ててくれた、今は亡き両親や兄弟たち、そして隣人たち、大地と大いなる自然。 北に霊峰富士を仰ぎ、東に沼津アルプス、南に駿河湾、西方に日本アルプスを望む、それは美しい風景と、新鮮な魚に恵まれ気候温暖な町、沼津。 干物の生産量は日本一のシェアを誇る。おすしのおいしい町。島郷は白桃の産地としても有名で、昔は桃郷と書いた。 沼津に御用邸があり、学習院遊泳場があるのは豊かな自然、農作物、新鮮な魚があって、住みやすい所として選ばれたのだと思う。 貞明皇后がこよなく愛したこの沼津御用邸。広大な敷地に西から長く続く千本松原、石の少ない広い砂浜、松林で松露を摘んで楽しまれたと光次良の小説にも出てくる。 昭和天皇のご幼少時代の御学問所や、馬場。一部焼失したが、ほとんどがそのままの形で残っている。貴重な文化財である。 周囲には時の政府の要人たち大山邸、西郷邸などの別荘が点在したという。歴史を感じる。 学習院遊泳場は現在も利用されており、今の陛下もご幼少の頃、良く泳がれたという。 私が子どもの頃、天皇・皇后両陛下が皇太子時代の、ご成婚まだ間もない頃おいでになった。 児童は全員小学校前の沿道に整列し、日の丸の小旗を振った。 白いワンピースに白いつばひろの帽子の美智子様にうっとりと見とれてしまったことを鮮明に覚えている。 それ以後、いらっしゃることもなかったのではないか。海が汚れ、環境が悪くなったからか。 現在は、その広大な御用邸は沼津市が公園として管理し、人々に解放されている。いろいろな催しがあって、また散歩コースにも、市民の憩いの場所にもなっている。 園内には、四季折々の花が咲き、私達の目を、心を癒してくれる。東付属邸は、お茶会や能、香道など、また最近では結婚式場としても利用されている。 毎年秋には、大菊華展が開催され、多くの菊愛好家が、その見事な作品を競い合っている 2005年10月に、私は「松籟の宴」に参加する機会が与えられた。 御用邸の松林に竹で作られた特設ステージで胡弓、チェロ、ピアノ、パーカッションの素晴らしい響きが松籟の宴にふさわしかった。波の音、微かな蟲の音。漆黒の闇の中にステージだけが明るく照らされ、なんとも言えない素晴らしさに心躍るのを覚えた。 数え切れないほどの松に、海から吹いてくる風にそよぐ松籟の音。夢のような世界である。 毎年のように我が家を訪れる外国のお客様を必ずお連れする名所である。 私のふるさとわが町にはこんなに素晴らしい憩いの場所があるのだと、幸せ感に浸っている。 またこの町の風向明媚なことから育まれた文人も多い。芹澤光次良は我入道に生まれ、井上靖は沼津のお寺に寄宿し、大岡信もみんな旧制沼津中学(現・東高)で学び、ここから程近い町で「伊豆の踊り子」を書いた川端康成を含めれば、日本のペンクラブの代々会長は、この地から出ていることになる。 太宰治の「斜陽」は、その一部が沼津で書かれた代表作であり、田中英光の「オリンポスの果実」や美しい文章で知られる福永武彦、また明石海人など沼津に関係する文人は非常に多い。 芹沢光次良の描く沼津は、まさに私の子供時代の思い出のいっぱい詰まった町であり、「人間の運命」は夜を徹して毎晩読みふけったものだ。井上靖描く沼津・三島、また伊豆は、これもまた親近感があり、特に「夏草冬浪」は忘れられない。 沼津に生まれ育ったことを今、60余年たって、本当に良かった、素晴らしい町に住んでいるのだと幸せに思うものである。 先年、千本松原に経を唱えながら一本、また一本と松の苗を植えて人々を救った増誉上人の像が台風で損傷し、何とか補修しようという呼びかけに多くの市民の賛同を得て見事に修復された。喜ばしいことである。私達の愛する沼津を、もっともっと美しく住みよい町にするため、みんなの力で守り育てて行きたいものである。 2年前から、沼津市振興公社の理事として、この沼津御用邸にも関与するようになった。 なかなかに、その維持、管理に大変な内情を知り、何とか、もっとこの素晴らしい場所、どこにでもあるものではない皇室文化を目の当たりに出来る場所として、もっと広く皆様にお越しいただける憩いの場にしたいものと、公社としても検討をしている。 女性をターゲットにしたイベントをもっと開いて市民のものにしたい。 和の文化、次の世代に受け継いでいってもらいたい、さまざまな伝統を、守っていかなければならない日本人の心のふるさとを、この場所で・・・。 富士山静岡空港を利用する中国・韓国からの観光客を沼津御用邸まで誘導することは出来ないものか・・・。 いつも、そんなことが頭から離れないでいる。 |
| << 前記事(2010/08/08) | ブログのトップへ | 後記事(2010/08/09) >> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|
| << 前記事(2010/08/08) | ブログのトップへ | 後記事(2010/08/09) >> |